保険でできる白い歯
―見た目だけでなく、長く使うために知っておきたいこと


 

「銀歯ではなく、白い歯にできますか?」

歯の治療をするとき、このように希望される患者さんが増えています。
以前は、奥歯の詰め物や被せ物というと金属が一般的でした。
しかし現在は、健康保険を使って白い材料を選べる範囲が広がっています。

ただし、「保険で白くできる」ということと、「どの歯でも同じ材料で、同じように治療できる」ということは別です。
歯の位置、むし歯の大きさ、噛み合わせ、残っている歯質の量などによって、適した治療方法は異なります。

 

 

小さなむし歯に使うコンポジットレジン

比較的小さなむし歯では、「コンポジットレジン」という歯科用の白い樹脂を詰める治療が行われます。

むし歯の部分を取り除き、歯に近い色の材料を直接詰めて形を整えます。
多くの場合、1回の治療で終了し、金属の詰め物に比べて歯を削る量を抑えやすいことが特徴です。

一方、むし歯の範囲が広い場合や、強い力がかかる奥歯では、レジンだけでは割れたり、すり減ったりする可能性があります。
また、時間の経過とともに着色や変色が起こることもあります。
そのため、「白くできるか」だけではなく、その歯が受ける力や修復範囲を考えて判断する必要があります。

 

 

CAD/CAMでつくる白い詰め物・被せ物

保険診療で使われる白い歯として、近年よく知られるようになったのが「CAD/CAM冠」と「CAD/CAMインレー」です。

CAD/CAMとは、歯型などの情報をもとにコンピューター上で形を設計し、樹脂とセラミックの成分を含むブロックなどから詰め物や被せ物を削り出す方法です。
前歯や小臼歯に加え、大臼歯にも保険適用の範囲が広がっています。

金属を使用しないため、口を開けたときに目立ちにくく、金属アレルギーの心配を減らせることも利点です。
近年、保険診療におけるCAD/CAM冠の使用は大きく増加しています。
厚生労働省の資料によると、2024年には全部金属冠を上回り、CAD/CAM冠が被せ物の算定回数の約59%を占めています。(mhlw.go.jp)

 

 

保険の白い歯にも条件があります

CAD/CAM冠は、すべての歯に無条件で使えるわけではありません。
使用する歯の位置や材料の種類、噛み合わせの状態などに、保険適用上の条件があります。

特に奥歯では、その歯だけでなく、反対側や前後の歯がどのように噛み合っているかも重要です。
2024年度の診療報酬改定では、大臼歯に対するCAD/CAM冠の適用範囲が広がりましたが、症例によっては一定の咬合条件が求められます。(mhlw.go.jp)

また、歯ぎしりや食いしばりが強い方、噛む力が集中しやすい方、被せ物を支える歯質が十分に残っていない場合には、割れや脱離のリスクを考慮しなければなりません。
白い材料を選べる歯であっても、それがその患者さんにとって最も長持ちする方法とは限らないのです。

 

 

自由診療のセラミックとは何が違うのでしょうか

保険診療のCAD/CAM冠と、自由診療で使われるセラミックやジルコニアは、どちらも白く見えますが、同じものではありません。

保険診療では、使用できる材料や治療方法、適用条件が定められています。
CAD/CAM冠は主に樹脂を含む材料でつくられるため、天然歯の色調や透明感の再現、耐摩耗性、変色のしにくさなどでは、自由診療のセラミックと差があります。

一方、自由診療では、歯の位置や噛む力、周囲の歯の色に合わせて材料を選びやすく、色調や形もより細かく調整できます。
ただし、自由診療だから必ず長持ちする、保険診療だからすぐに壊れるという単純な違いではありません。
どの材料でも、削り方、接着操作、噛み合わせの調整、その後のセルフケアやメインテナンスが耐久性を左右します。

 

 

「白くすること」より「歯を守ること」が目的です

白い歯は、口元の印象を自然にし、金属を使わないという点でも魅力があります。
しかし、治療の目的は材料を白くすることではなく、その歯をできるだけ長く使える状態にすることです。

むし歯の大きさ、歯の位置、噛む力、歯ぎしりの有無、清掃状態まで確認したうえで、コンポジットレジン、CAD/CAM修復、金属、自由診療のセラミックなどを比較することが大切です。「保険で白くできますか」と遠慮なくご相談ください。
そのうえで、見た目だけに偏らず、歯を守るために適した方法を一緒に考えていきます。

参考資料・参考文献:「令和6年度診療報酬改定の概要【歯科】」「令和6年度歯科診療報酬改定の主なポイント」「歯科医療その1」「疑義解釈資料の送付について(その10)」「別添2 歯科診療報酬点数表に関する事項」

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