こんにちは。
高田馬場の「いなげ歯科」院長の稲毛です。

私は日本大学大学院で保存修復学を専攻し、歯学博士号を取得しました。現在は日本歯科保存学会の歯科保存上級医として、患者さんの歯を一本でも多く守ることを使命に日々診療にあたっています。

今回のテーマは、「食」と「歯の数」の関係についてです。

「最近、食事が以前ほど楽しくない」
「硬いものを自然と避けるようになった」

そんな変化を感じている方に、ぜひ知っていただきたい内容です。

 

20本の歯が、人生の彩りを左右する

皆様は「8020(ハチマルニイマル)運動」をご存じでしょうか。

これは「80歳になっても20本以上の自分の歯を保とう」という、厚生労働省や日本歯科医師会が推進している取り組みです。

成人の歯は親知らずを除くと28本あります。
理想はすべてを生涯維持することです。

しかし研究では、20本程度の歯が残っていれば、ほとんどの食べ物を大きな不自由なく食べられると報告されています。

1980年代の研究(長尾ら、1987年)では、食品の種類によって必要な歯の本数が異なることが示されています。

 

 

食品別・美味しく食べるために必要な歯の数

■ 1820本以上必要な食品
フランスパン、たくあん、おこわ、ナッツ類、ステーキ
「バリバリ」「ザクザク」といった歯ごたえが重要な食品です。歯の数が不足すると、本来の食感や風味を十分に楽しみにくくなります。

■ 617本で食べられる食品
きんぴらごぼう、かまぼこ、煮魚、れんこん
ある程度の弾力がある食品です。食べることは可能ですが、噛む力や楽しさは徐々に制限されていきます。

■ 5本以下でも食べられる食品
バナナ、うどん、お粥、豆腐、ハンバーグ
柔らかい食品は歯が少なくても摂取できますが、食事内容が偏りやすくなります。

この研究から分かるのは、
食感まで含めて「おいしく」食べるためには、1820本程度の歯が望ましいということです。

 

 

柔らかい食事中心になることの健康リスク

歯を失うと、自然と柔らかい食品中心の食生活になります。

柔らかい食品は咀嚼回数が減りやすく、満腹中枢への刺激が弱くなります。
その結果、食べ過ぎや血糖値の急上昇につながる可能性があります。

また、「噛む」という行為は

  • 唾液分泌の促進
  • 消化の補助
  • 脳血流の活性化

などに関与しており、全身の健康との関連も示唆されています。
一生おいしく食べられることは、単なる贅沢ではなく、健康そのものなのです。

 

 

保存学会上級医としての「抜かない選択」

いなげ歯科では、安易に歯を抜かない診療を心がけています。
他院で「抜歯が必要」と言われた歯でも、精密な診査により保存できる可能性が見つかることがあります。
そのため当院では以下の設備を活用しています。

  •  マイクロスコープ(歯科用顕微鏡)
    最大20倍程度まで拡大可能。
    根管治療などの精密処置の成功率向上に寄与します。

  • 歯科用CT2022年導入)
    3D画像で骨や炎症の広がりを把握。
    正確な診断が保存治療の第一歩です。

  • デジタルレントゲン
    被ばく量を抑えながら高精度の画像診断を行います。

 

 

私のベースラインは「予防歯科」です

高度な治療技術は、あくまで歯を救うための最後の砦。
本当に大切なのは、悪くなる前に守ることです。

定期的なメインテナンスと専門的クリーニングにより、8020を達成する方は確実に増えています。
高田馬場の地で、地域の皆様が一生ご自身の歯で食事を楽しめるよう、これからも全力でサポートしてまいります。

歯を残したいとお考えの方は、ぜひ一度ご相談ください。

>>予防歯科はこちら

 

 

【エビデンス・参考資料】

  • 厚生労働省「歯科疾患実態調査」
  • 長尾ほか(1987)「咀嚼能力による食品の分類」
  • 厚生労働省 e-ヘルスネット
  • 日本歯科保存学会 診療ガイドライン

知覚過敏

 

2月に入り、高田馬場でも身を切るような寒さが続いていますね。 朝、いつものように顔を洗って、うがいをした瞬間。

「キーン!」

冷たい水が歯に触れた衝撃で、思わず顔をしかめてしまった……そんな経験はありませんか? 「また知覚過敏かな」「様子を見れば治まるかも」と、つい後回しにしがちなこの痛み。実はその裏側では、歯の中で驚きの「物理現象」が起きているんです。

今回は、当院が大切にしている「歯を抜かない・削らない」ための予防医学の視点から、あの刺激の正体を楽しく紐解いてみましょう。

 

歯の中に広がる「数万本の水のトンネル」

私たちの歯の内側(象牙質)には、象牙細管(ぞうげさいかん)という、目に見えないほど細いトンネルが無数に走っています。その数、なんと1平方ミリメートルあたり数万本!

このトンネルは歯の神経へと繋がっており、中には「組織液」という液体が満たされています。 ここで登場するのが、歯科医学の重要な理論である「動水力学説(Hydrodynamic Theory)」です。

 

ブレンストレム博士のワンポイント解説】

 歯の表面に冷たさやブラッシングなどの刺激が加わると、このトンネルの中の液体が、内側や外側へ「ギュン!」と猛スピードで動きます。 その液体の移動(流動)が、奥にある神経を刺激して「痛い!」という信号を送る……。これが、知覚過敏の正体なのです。

(参考文献:Brännström M. Sensory Mechanisms in Dentine. 1963.)

つまり、しみる感覚は神経に直接何かが触れているのではなく、「歯の中の液体がジェットコースターのように動いたこと」への反応だったのです。

 

なぜ「知覚過敏」と「むし歯」は見分けがつかないのか?

ここからが、保存歯科において非常に大切なお話です。

実は、患者さんが感じる「知覚過敏のキーン!」と「虫歯のキーン!」。この二つは、脳に届くときにはほとんど同じ信号になっています。

  • 知覚過敏:歯ぐきが下がってトンネルの入り口がオープンになり、水が動く。
  • むし歯:菌が歯を溶かしてトンネルの壁を壊し、そこから水が動く。

入り口の壊れ方は違っても、起きているのは同じ「液体の移動」。 だからこそ、「痛みは一瞬だし大丈夫」という自己判断は禁物です。脳に伝わるシグナルが似ている以上、精密なチェックを行わない限り、本当の原因を突き止めることは難しいのです。

 

「抜かない・削らない」ための小さなサイン

いなげ歯科では、「可能な限り抜かない・削らない・痛くない」治療をコンセプトにしています。

「しみる」という感覚は、歯が一生懸命に「これ以上、奥まで刺激を入れないで!」「異変が起きているよ!」と教えてくれている、精巧なアラート機能です。

2月の寒さでこのアラートに気づけたなら、それは歯を守る最大のチャンス。 早めに「水のトンネル」の状態をチェックし、適切なコーティングや再石灰化の処置を行うことで、将来的に歯を削ったり、神経を取ったりするリスクを最小限に抑えることができます。

 > 医院コンセプト

 

高田馬場駅近く、お仕事帰りや土曜日もご相談ください

「ただの知覚過敏かな?」とやり過ごす前に、まずはその「水のトンネル」の健康状態を確認させてください。当院は患者さん一人ひとりと向き合う「患者さんファースト」の歯科医院として、丁寧な診断を心がけています。

冷たい水に負けない健康な歯で、暖かい春を迎えられるようにお手伝いします。 「もっと早く来ればよかった」という後悔を、「早く相談してよかった!」という安心に変えていきましょう。

 

【いなげ歯科医院のご案内】

  • アクセス:高田馬場駅 戸山口(南)出口より徒歩2分(駅近で通いやすい!)
  • 診療内容:一般歯科・予防歯科・歯周病治療・矯正歯科・ホワイトニング等
  • 診療時間:平日はもちろん、土曜日も営業しております。

参考文献

  1. Brännström M. Sensory Mechanisms in Dentine. 1963.
  2. Brännström M, Aström A. International Dental Journal. 1972;22(2):219-227.
  3. Addy M. International Dental Journal. 2002;52(S5):367-375.
  4. Orchardson R, Gillam DG. JADA. 2006;137(7):990-998.