未処置のむし歯が3割
――「できるだけ歯を残す」という診療が、ここから始まります





いなげ歯科は、2009年4月にこの高田馬場の地で開院しました。

そして2026年、17年目を迎えます。

振り返ってみると、診療スタイルや使う機器は少しずつ変わってきました。

しかし、開院当初から一度も揺らいでいない考え方があります。
それは――
「できるだけ歯を残す」ことを、学問として、技術として、誠実に実践するという姿勢です。

これは決して理想論ではありません。

日々、目の前の一本の歯と向き合いながら積み重ねてきた、現実的な判断の結果でもあります。



痛みがないむし歯ほど、見過ごされやすい


「むし歯は痛くなったら歯医者に行けばいい」
多くの方が、今もそう考えているかもしれません。
しかし実際には、日本では成人の約3割が未処置のむし歯を抱えているとされています。

しかもその多くは、強い痛みを伴いません。

成人のむし歯は、

・詰め物や被せ物の下
・歯と歯の間
・歯ぐきとの境目

といった、自分では確認しづらい場所で、静かに進行することが多いのです。
「特に困っていない」
その言葉の裏で、むし歯が少しずつ深くなっていることも、決して珍しくありません。



放置されたむし歯が、歯の運命を変えてしまうこと


むし歯は、放っておいて自然に治る病気ではありません。
むしろ、時間とともに選択肢が減っていきます。

・削る量が増える
・神経を取らざるを得なくなる
・被せ物が大きくなる
・最終的に歯を失うリスクが高まる

治療のスタートが遅れるほど、「歯を守る治療」から「失った機能を補う治療」へと、診療の性質が変わっていきます。
だからこそ私たちは、「今すぐ治療が必要かどうか」だけでなく、「この歯を、どこまで残せるか」を考えます。



保存歯科という考え方


歯科医療には、さまざまな専門分野があります。
私の専門は保存歯科です。
保存歯科とは、むし歯や歯の神経の炎症、歯周病に対して、

・できるだけ削らない
・できるだけ抜かない
・自分の歯をできるだけ長く使う

ことを目的とした分野です。

診療中、患者さんからこんな言葉をよく耳にします。
「神経を取らずに済みませんか?」「抜歯と言われましたが、本当に他に方法はないのでしょうか?」

こうした問いに対して、感覚や経験だけで答えるのではなく、科学的根拠(エビデンス)を踏まえて判断する――
それが保存歯科の基本姿勢です。



大学病院で学んだ「長く噛める」という視点


私は日本大学大学院保存学科にて歯学博士を取得し、
その後、日本大学歯科病院に約10年間勤務しました。

大学病院では、日々の診療に加え、

・症例検討
・研究
・学会発表

を通して、「なぜこの歯は残せたのか」「なぜこの歯は守れなかったのか」
を何度も振り返ってきました。
短期間で“きれいに治った”かどうかよりも、
10年後、20年後にその歯で噛めているか

その視点は、現在のいなげ歯科の診療にも、そのまま引き継がれています。

「治すため」だけでなく、「守るため」に通う歯科へ
小さな変化の段階でむし歯を見つけられれば、

・削る量を最小限にできる
・神経を守れる可能性が高まる
・治療の負担や回数も軽くなる

といったメリットがあります。
症状が出てからではなく、
症状が出ないうちに確認する

 それが、歯を長く使い続けるための現実的な方法です。

高田馬場で17年。
これからもいなげ歯科は、「できるだけ歯を残す」という診療を、静かに、誠実に続けていきます。

>>診療の流れ



【エビデンススペース(参考情報)】


本記事は、以下の公的データや歯科医学の知見を参考に構成しています。

    • 厚生労働省「歯科疾患実態調査」
      
成人における未処置むし歯の存在や、年齢とともに自覚症状の乏しいむし歯が増える傾向が報告されています。

 

    • 日本歯科保存学会の基本的な考え方
      保存歯科は、歯の寿命を延ばすことを目的とし、早期発見・最小限の侵襲(MI:ミニマルインターベンション)の重要性が示されています。

 

    • 大学病院・保存系診療科における長期予後研究
      むし歯や歯髄治療では、短期的な治療結果だけでなく、10年・20年単位で歯が機能しているかという視点が重要とされています。

 

    • 定期管理(メインテナンス)に関する臨床報告
      定期的に歯科でチェック・管理を受けている方は、歯の喪失リスクが低いことが多くの臨床現場で確認されています。